たたらへの安来市の取り組み

インタビュー

安来市長が語るたたらへの思い

ドジョウすくいの由来は砂鉄すくい?

奥出雲の砂鉄を採集し、たたら製鉄でできた玉鋼を港から日本全国に搬出する拠点だった安来。鉄の積出港として栄えた賑わいの歴史を観光として再発見して町おこしをしたいという安来市の田中武夫市長に話を聞いた。

「こっけいなドジョウすくいの宴会踊りで知られる安来節ですが、踊りのもとは砂鉄すくいから由来しているともいわれています」と教えてくれた田中市長。風待ちの港だった中海の安来港。当時の日本海流通航路を担った北前船の船頭たちの間で生まれた安来節のドジョウすくいがたたら製鉄と関係があったとは。
「安来のドジョウは骨が柔らかく休耕田などで養殖しているブランドドジョウです。現在はおもに金沢方面に出荷していますが、竹串に刺して焼いて食べる蒲焼はおいしいんです」。

「鉄の道文化圏」で町おこし

安来市では隣接する奥出雲町と雲南市と共同プロジェクトとしてこの地方の鉄の歴史、文化を保存、公開する「鉄の道文化圏」を設立してたたらの文化的価値を後世に伝える取り組みをしている。
「現在たたら製鉄で玉鋼を作っているのは日刀保たたらだけですが、日本刀はここで作った玉鋼を使わないとできません。かつて玉鋼は安来港を基点として全国に流通していったのです。そんな鉄の文化の集大成として鉄の道文化圏のストーリーを安来から発信していきたいですね」


たたら製鉄の伝統技術は時代と共に近代製鉄技術へと形を変え、安来は高品質の鉄鋼を生産する町に発展。高級特殊鋼「ヤスキハガネ」が誕生した背景にはまさにたたらの伝統文化があったといえる。ちなみにクルマの無段変速機(CVT)に使われている特殊鋼のほとんどが日立金属の安来工場で生産されていることはあまり知られていない。
安来港界隈に立ち並んでいた鉄問屋や商家の面影が残る街並みをサイクリングで周ることができる。安来駅近くには近代日本の陶芸界を牽引した河井寛次郎の生誕碑やゆかりの寺、寛次郎作の灯篭などがある。

市内観光名所といちご農園を合体

また観光農園への取り組みも積極的。近年積極的に取り組んでいるのがいちご狩りへの観光客の誘致だ。安来市観光協会はイチゴ農家と観光ガイドマップを作成して市内の観光地と合わせて紹介している。田中市長も
「安来は島根県最大のいちご産地。鮮度の良いいちごは地元でないと味わえません。天台宗の古刹・清水寺や足立美術館などの観光地と併せて個人客や女性客を誘致していきたいですね」と語る。

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