意外と知られていない東京から1時間のクルージング天国
念願のボート免許を取得し、いざ海へ。とは言ってももちろんボートは持っていない。そこで頼りになるのがレンタルボート。今回は、東京、神奈川近郊に住む人にとって利用しやすい三浦半島にある「油壺京急マリーナ」を訪れた。
マグロの漁港としても知られる三崎港に近く、東京湾から相模湾にまたがる海のリゾートだ。海の色も透き通ったブルーで、葉山、鎌倉・江の島の海岸線を望む景色はまさにカントリーオーシャン。冬から春にかけて天気のよい日は、マリーナを出ると、すぐに前方に銭湯の絵のような感動的な富士山を拝める。こんな美しい光景は日本広しと言えどそうはない。 油壺京急マリーナは創業1962年の老舗マリーナで、三浦半島先端の西側、相模湾に面する諸磯湾の静かな入り江にある。都心から車で約1時間半、電車なら京急・三崎口駅からタクシーで15分ほどだ。
このあたりは諸磯湾のほか、油壺湾、小網代湾があり、どの方角からも風を避けられる絶好の入り江(良港)なのだという。穏やかな海の周辺には別荘も多く、四季を通じてヨットやボートなどアクティビティのほか多様な海のマリンレジャーを楽しむことができる。
レンタルフィッシングボート ヤマハF.A.S.T.23で諸磯湾から三崎港へ
油壺京急マリーナで借りられるレンタルボートは、6人乗りのフィッシングボート「ヤマハF.A.S.T.23」。魚影の濃い油壺周辺の海にはジャストサイズのボートだ。
午前9時、リゾートペンションのようなおしゃれなクラブハウスに到着。レンタル手続きをして、安全講習ビデオを見た後、周辺の海域の注意事項などの説明を受ける。この日は比較的穏やかな海況だったので、特に難所と呼ぶようなところはなく、岩場にあまり近づかなければ大丈夫そうだ。
このマリーナの特徴の一つは船を陸上に保管する「陸上艇置」であること。レンタルボートも例外ではない。なので、出航にあたっては、フォークリフトでボートを持ち上げ、岸壁からそのまま海上に下ろす。見ているだけでも結構な迫力だ。
さあいよいよ出航。最初はスタッフが乗船してくれ、湾とその周辺を案内しながら操船の注意事項などを丁寧に教えてくれる。桟橋に戻り、今度はスタッフに見送られながら、自分たちだけで出航だ。
ボート桟橋からゆっくりと船を繰り出すと、すぐに左手に諸磯崎灯台が見えてくる。夏には海水浴もできるこの周辺は岩礁が多く操船は慎重にしないといけないが、魚たちには格好の住み家のようで手漕ぎボートの釣舟がいくつも浮かんでいる。この辺は魚種も多彩でアジ、サバやタイ、カレイ、イカ、メジナなど、サビキ釣りやルアーフィッシングが楽しめる。
マリーナから目と鼻の先でこんな絶好な釣り場があるんだからありがたいことこの上ない。見晴らしのよい日なら江の島や富士山を眺めながら釣り糸を垂れることができる
三崎漁港と城ケ島はフィッシングポイント
諸磯崎灯台を過ぎると水深の深い大海原の相模湾に出る。舵を左に切ると10分ほどで三崎港、城ケ島に到着する。
三崎港はクルマで朝市に来て魚介の買い物をしたことは何度もあるが、ボートを操船して海から港に入るのは初めてだ。見ると岸壁には多くの釣り人が並んでいる。ここは大物が釣れるポイントなのだろう。
三崎といえばマグロ。三崎漁港周辺には有名なマグロのお店をはじめ、バラエティ豊かなスポットがひしめき合っている。漁港内にある産地直送センター「うらり」は有名で、マグロを使った料理やお土産を手に入れられる観光の拠点だ。
さらにボートを進めると右手には城ケ島が近づいてくる。頭上には城ケ島大橋が迫ってくる。全長575メートル、海面からの高さ21メートル。中央部分の橋梁が赤く塗られ、城ヶ島のシンボルともなっている。橋の上を渡ったことはあるが、下をくぐるのは初めてだ。
さて、景色を楽しみながら、釣りにもチャレンジ。三浦半島は釣り人たちの人気エリア。諸磯灯台周辺の磯からの釣りは禁止されているところもあるようだが、ボートからの釣りは面倒な制約はない。ボートフィッシングなら「ビギナーでも爆釣は間違いなし!」と鼻息も荒くなってきた。
持参した仕掛けは、短いリール竿とオールマイティに使えるアジ・サバ用の「ジギングサビキ」。これはサビキ釣りの仕掛けにおもり代わりのメタルジグ(ルアー)を合わせたもの。めんどうな生き餌を使わないのでお手軽で、海底に魚がいれば釣れる可能性が高い仕掛けだ。さーて何が釣れるかな。
天気は最高。ボートフィッシングの絵としては完璧……のはずなのだが、この日は待てども待てどもアタリがない。ポイントを移動しても糸はピクリともしない。いかに人気の釣り場といえど予備知識や準備なしに釣ろうというのは虫が良すぎるということか。2時間ほどがあっという間に過ぎてしまった。残念。
マリーナを出航して約4時間。城ケ島をぐるりと一周する三崎港クルージングはあっという間に終わった。今回は釣果を得られず残念な結果だったが、三浦半島の海と自然は満喫した。次回は万全の装備で大物釣りを楽しみたい
前泊してアウトドアキャンプ+温泉を楽しむアイデアも
ボートを下りた後も楽しみがあるのがこのエリアの魅力。特に、近くには日帰り温泉入浴もできる「観潮荘」がある。ここの魅力は眼下に小網代湾を眺めつつゆったりと体を癒すことができるの露天風呂。しかも海から湧き出た温泉。地殻変動などで地中に閉じこめられた海水に、周囲の地層や海藻・草木などが溶け込んだ「化石海水」というナトリウム温泉だ。入浴料は大人1200円+入浴税150円。
宿泊もできるので、余裕があれば前泊して地元三崎名物のマグロ料理を堪能するのもいいだろう。油壺京急マリーナからは徒歩10分程度、三崎口駅からもタクシーで15分程度の距離だ。
また2022年1月に新たな情報が飛び込んできた。隣接する旧京急マリンパーク跡地に「京急油壺温泉キャンプパーク」がオープンした。富士山や相模湾に沈む夕日を眺めながら温泉+キャンプと焚き、あるいはオートキャンプ(利用料金4500円〜)が楽しめるからクルマを利用するなら利用価値大だ。